いっぱい書きたいことはあるのですが、例によってまとめる力がないので、どんどん吐き出していきます。
こうした映画こそ感想はていねいに、ぎゅうっとまとめるべきだと思うのだけど。でも今の気持ちを取りこぼしたくないという思いが先に立つ(勿体ないって思うタイプです。)ので、例によってグダグダ書いてしまいます。
すみません、いつもいつも読みにくい感想文で…。
まあいい、まとめるのはあとでもできる。(ものぐさだからやらないのですけどね…苦笑。)
大好きな二人がただそこにいるだけでうれしい私には贔屓目な感想しか書けないので悪しからず。しっかりとした原作がある映画なので文字反転はなしでいきます。
地元での公開初日に喜び勇んでいくつもりが、ぎりぎりになって予定がつかなくなり断念。そしてぼんやりしているうちに、気がつけば公開は今週末まで! ということでにわかに焦り、無理やりスケジュールを組んで出かけてきました。
ストーリーは短編を読むのがいちばんだと思うので書きません。立ち読みですぐ読めるボリューム。
まず、撮影セットがもう最高に好きなんです。
あのセットだけずっと映していてくれても快適、というくらい。このセットについてはあとで観た「晴れた家」で堪能でき、本当にしあわせに感じました。
小高い丘のうえに立つトニー滝谷のアトリエ。
空がとにかくきれい。大きく窓のあいたアトリエから見える景色は大きな空を独り占めして、すぅっと風が吹き抜けて。まるで神聖な舞台のよう。
そして、そのアトリエを訪れる宮沢りえちゃん。
すごく急な坂をのぼってくるから、頭からほんの少しずつ、少しずつ画面に入ってくるんですが、その風景が、もうどうしようもなく美しくて、「りえちゃーん!」と叫んでしまいそうになったよ。映画館のど真ん中で。
あと色調がね。グレイッシュで、にじんだ感じで、なんだか古い写真みたいで、やわらかくて、とても落ち着くんです。ときどき光がぱあっと差しこむ場面では、まぶしいくらい真っ白になるのですが、そことの対比も心地よかった。
部屋の目線、おいてある小物、サボテンと霧吹き、にも、泣きそうになってしまいます。わたしが好きなものばかりだということ。趣味がとことん統一されていること。それらのものに対する二人の愛着が、端々からにじみ出ていること。何でそんなことまで表現できるのかしら。すごいですね映画って。
物語はほとんどがアトリエで進んでいきます。そしてひとつひとつの場面は、まるでページをめくるかのように、右から左へ、ゆっくりとカメラが画面を送っていくことでつながっている。場面と場面を仕切るのは、画面の右から左へ流れていく壁。それはときにしっくいだったりコンクリートだったり木だったりして、観ている側は次の場面を覗きみるのをわくわくしながら待ってしまう仕掛けです。
欲を言えば、パンフレットのページをめくる方向がこの画面送りと逆方向だったのが残念で残念で。意識が届いていたら同じ方向にそろえられたのではないかと、個人的には思うのですが(パンフ本文を横書きにするとか、縦書きでもあえて逆開きにしてみるとか)。これが気になったのは私だけ? 返す返すも残念でした。
ところでこのゆるやかな画面の流れ、「ライフ・イズ・ジャーニー」のなかの短遍「LIFE」が思い起こされて心地よく感じました。なにしろ「LIFE」も、ラーメンズの小林賢太郎さんと大塚寧々さんという、わたしのとても好きな役者さんによるものだったので。空、風、人生を切り取った物語、など、共通したモチーフはほかにも多かったです。
何だろう、宮沢りえちゃんもイッセーさんもものすごくいい演技なのだけど、その演技を全然リアルに感じないというか。彼らの存在そのものがもう、透き通っているんです。ものすごく寓話的で。二人も含めて、アトリエの素敵な「インテリア」なのではないかとまで思わせるほどに。
で、不思議なのですが、トニーとA子の、もともとこの世の人間じゃないようなリアリティのなさ、存在感の軽さが、却ってこの映画をとってもリアルにしているんじゃないかしらと感じました。
逆に存在感があったのはB子ですが、さらに圧倒的な存在感をもってわたしを押しつぶしたのが、ずらりと並んだ洋服の山、あとトニーの父が残していったレコードの山。ヒトよりもモノのほうに存在感や現実味があるというのが不思議な感じでした。
洋服とレコード、これが間違いなく、この映画でいちばん生々しい登場人物。洋服の部屋が発するメッセージ性は圧巻で、ひとつひとつの服を買うのに過ぎた時間が観ている人の頭の中に勝手に想像されてしまうのです。
B子が洋服を観て泣くシーンでは、B子を観るよりもむしろB子といっしょに部屋の洋服をみてあらためて圧倒されてしまいました。このシーン、部屋のなかにある「洋服」が「自分がパーソナルに抱いているコンプレックス」と重なって見えるような仕掛けがされていたのではないでしょうか?
自分がこれまで衝動を抑えきれず大量に集めてきてしまったもの、ほんとうは必要ないはずなのに決して自分では捨てられないもの。少なくともわたしには、洋服ではなく別のあるものが、部屋のなかにぎゅうぎゅう詰めになって見えました。
(こうした観点、ハチクロのときにも書いてたなぁ。でも思ったことだからいいの!)
あとは、ちょっと咀嚼しきれなかった部分があったので書いておきます。
まず心にはっきり残ってしまったのが、最後のシーンで会話の中でのみ登場した、手袋。黄色と紫色、という気持ち悪い補色の組み合わせがざらりざらりと頭に焼き付いて、最後のシーンだっただけに、エンドロールの終わりまで消えてくれなかった。これは演出どおりだったのでしょうか。私はそこまで手袋の色でざらざら感を出さなくても、十分ストーリーのみでラストの会話がもつ味合いは伝わると思ったのだけど。その点はいまも疑問に思っています。
それからA子と別れた彼の登場シーン。いやな感覚が残ったけど、なぜ登場しなければいけなかったのか、が、ちょっとよくわからない。手袋のシーンと同じくいやな感覚を残すのが目的なら、その意図がまだ理解できないなぁ、という状況です。
あと最後にちょっとしたつっこみどころを。トニー滝谷がビールを飲んでた時代って、缶ビールはまだプルトップじゃないよね? プルトップ開けてたよね確かに? こまかーくていやらしいけど、観ちゃったから書いちゃいます。勘違いだったらごめんなさい。
えっと。
わたしはちょっとエンターテイメントに関して贅沢過ぎやしないだろうか。と、この映画観ながらぼんやりと考えました。
しばらくの間、エンターテイメントとの向き合い方を考えなおしてみたほうがいいよ。
そんな気持ちにさせてくれる映画だったのです。
あ、お金などといった物質的な側面からではなくて、心。精神的な側面からみた場合の話ですこれは。
何を言っているのかとても伝わりにくいことは承知しているのですが、これが、この映画を観たときの自分の思いを象徴的に表しているような気がします。
いとおしい映画がひとつ増えて、嬉しい、というよりしあわせです。メイキング「晴れた家」の感想はまたあらためて書きます。
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ちょこっと追記:
坂本龍一さんの音楽はやっぱりよかったなあ。後からじわりじわりと思い出しては映像ととけあって、心地よい感触が心に育ちつつあります。
いま、ふらりふらりとほかの方の感想サイトを拝見しました。
大学生のイッセーさんに関して書かれている記事が多くて、わたしも確かにその場面でちょっと笑ってしまったことを思い出しました。笑。まぁでも代案が思い浮かばないんですよね〜。大学生のトニーに別の役者さんが登場するのも違和感があるし。だから、これでよかったのかなって、思っています。きっと現場でも「これ無理あるかなあ」なんて笑いながら撮影したのではないかしらと、勝手に推測してまた思い出し笑い。
あと、ルノー・サンク、乗りたくなりました。はあ。キャトルもいい。誰か買って!色は白でよろしく。
以下、心に残ったサイトの記事いくつかにリンク&トラバさせていただきますm(_ _)m。→higansugimade、A Confucian Confusion、LM * The Letters about a MOVIE.、シネマクロニクル

最初の方でまとまらないとか書かれていますが、面白く読ませていただきました。また、僕のサイト、見に来てください。
ちなみに僕はルノー5の赤が欲しいです(笑)
存在感の無さが村上作品の特徴といえば特徴ですね。
それをうまく表現してたと感心しました。
ところで、フィンランド在住なんですか?
おととしのクリスマスに来日したサンタさんの通訳をやりました。
これからもよろしく〜。
peridotさんのレポートも、何度も読みたいなぁと思ったのでトラックバックさせていただきました。フィンランド在住ではないですよ。フフフお恥ずかしい。去年の夏に数日ちょこっと行っただけのヒヨコものです。今年も行けたらいいな。
こういう映画を観ると、ほんとに「何でそんなことまで表現できるのかしら」って思いますよね。ぼくもそう思いました。
あと、ぼくはイッセーの大ファンでもあるので、彼の演じる大学生をもっと観たいなという感じです。でも、それだとこの映画自体をハンマーで叩いてまわるような呪われたシーンになってしまいますので、市川監督も泣く泣く縮小しなければならなかったんだと思います。もっとも、きっと最初から一瞬だけのシーンで、きっとそれをさらに短くしたんだと思いますが。
イッセーさんの演じる大学生ですが、メイキングで非常に熱心に練習を繰り返すイッセーさんが映されていましたね。「練習しすぎるといけないって注意されちゃうよ」なんて、スタッフさんにまで言われたりしていて。笑。確かに大学生のイッセーさんだらけだと、映画の意味合いがまったく別ものになってしまいますねぇ。あはは。
わたしは舞台のイッセーさんにお会いしたのは一度だけなのですが、これからももっともっと観たいと思っています。1人2人芝居、行きたいな〜。
「トニー滝谷」は大好きな映画なので、熱く愛をもって語ってらっしゃる記事を読んで共感いたしました。
こちらこそ、深い考察に裏付けられた記事を拝見して、映画を観たときの気持ちをありありと思い出しました。ありがとうございます。
DVD発売が楽しみですね!