フィンランド・ラハティ交響楽団
日時 2006年10月9日(月・祝)
開演 14:00(開場 13:15)
会場 兵庫県立芸術文化センター 大ホール
■出演者
指揮 オスモ・ヴァンスカ
ピアノ ユホ・ポホヨネン
管弦楽 フィンランド・ラハティ交響楽団
■プログラム
コッコネン:風景〜室内管弦楽のための
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品43
http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/center/top.html
久しぶりのクラシックコンサート。聴いてきました。
やっぱり初めてのものや、久しぶりに触れるものって、いいですね。
変な種類の慣れが自分の中にない状態で受け止めるものごとのほうが、
より強い衝撃を受けられるんだなあと、今回あらためて実感。
やみくもにたくさん観ればよいというものでもないんだなあ、と。
コンサートやライブ、舞台に足を運ぶ頻度やタイミングについて、
いちど落ち着いて見直してみる時期にきているのかも。
で、今回のラハティ響の演奏が、もうね。すばらしかったのです。
特殊な、そして貴重な体験をしたと今でも思います。
まず、ホールが特殊。
全面に木が張ってあるという、とても贅沢なつくり。反響がすごく豊か、かつやわらかい。私の座席は4階、さながら木のオルゴール箱を上から覗き込むかのような場所でした。なので、音がぬくもりを帯びて湯気のようにほわほわほんわりと立ちのぼってくるような届き方でした。
弦の人数は高弦から順に、6、5、4、3.5、2.5プルト(たぶん)。決して多いというわけではありませんが、奏でられる音はびっくりするほどのダイナミックレンジでした。無音、弱音の美しさと、ムクムク爆発するような迫力あふれるクレッシェンドの両方が、本当にすばらしかったのです。これはダイナミクスに限らず、演奏全体を通して、慎ましさと大胆さが共存していた、というのが、今回の演奏会のもつ非常に大きな魅力でした。最高。
一曲目、コッコネン「風景」の出だしと、二曲目グリーグのピアコン第2楽章出だしで、ぞくぞくぞくと震えが。音の芯が冷たくて、ひんやりと冷たい何かに背中をなでられた感覚。なのに、しばらく聴いているうちに、こちらに届く音そのものはなんだか不思議とあたたかいなあと感じるようになってきました。木をふんだんに使ったホールのせいかなあ。もしくは私の耳のせいかも。前日までボロフェスタ会場で大きな音をガンガン聴いていたので、そのせいで音の角がまるく聴こえちゃったのかもしれません。
とにかく、まるでキンキンに冷えたドライアイスからゆらりゆらりとたちのぼる白い二酸化炭素のさまを、木箱の上から眺めるような感覚でした。全体的に、前に私が足を運んだ来日公演(1999年)で聴いたときよりも、やさしくまろやかな印象。弦がとろけるようにきめこまやかで、でもしっかりとキレもある。あたたかみと知性が同居している感じが、とっても好みでした。親密な音を届けてくれたかと思うと、パウゼでふっ、と、つきはなされるんです。その、ほどよい距離感が、私にはとっても心地よかったです。
私にとって「いい演奏」とは、「聴くことで新しい発見を与えてくれる演奏」。今回のラハティ響コンサートでは、曲ごとにそうした新しい発見がありました。
コッコネン作品のもつ親密さ。ピアコンでの弱音の魅力、第2楽章のうまみ。
シベ2の第2楽章はもともと大好きでしたが、今回聴いたそれはいままで自分が知った気になっていたものとはまるで違う、生まれたてのようなみずみずしさにあふれた、新しい曲でした。ぴかぴかのスコアを目にしているような感動におそわれて、思わず涙がポロポロ出ちゃいました。泣くのなんてもったいないから我慢しようと思っていたのに、それでも。
そうなんです。今回の演奏はいずれも、まったく新しい曲を聴くような気持ちにさせてくれたのです。関西公演のプログラムが発表されたときには、正直言ってもっと目新しい曲が聴いてみたいなと思っていた(そのときの記事は
こちら)のですが、演奏を聴きながら、そんな自分の傲慢さと浅はかさを何度も恥じました。
また、聴いていてとてもわかりやすかったのにも驚きました。それぞれの曲がもつよさを、手取り足取り教えられてる感じ。ここのティンパニは大事なんだよ、とか。このパウゼはしっかりかみしめるといいよ、とか。スコアの要所要所に、パッとスポットライトがあたっていくように、オケのやりたいことがそのまままっすぐ伝わってくる。解釈のひとつひとつに無理がないため、演奏に強い説得力が生まれていたように思います。
演奏する姿がとてもきれいでうっとりでした。特に弦楽器。弦楽器って、演奏にかかわるすべての所作が外から見えるので、所作の美しさは確実に、そのまま音色の美しさにつながっているんです。ラハティ響の演奏、DVDで観ることってできないのかなあ。CDは多く発売されていますが、DVDは見かけたことがないので、ちょっと調べてみようと思います。映像で観てもきっとものすごく見ごたえがあると思うんです。
アンコール一曲目の「悲しいワルツ」では、ピチカートの美しさを新たに知りました。また、小節ごとにざわざわと揺れ動く、二拍目三拍目の新しいリズムにも感嘆。繰り返しになりますが、どうやったらあんなふうに「新しい曲を演奏している」感じを出せるのかしら。不思議です。
まあ、新しい新しくないという話でいうと、アンコール二曲目の「フィンランディア」はさすがに新しくなかったなあ、それはもうしかたがないと思います。でも、この曲はいくつもの部分に分かれているにも関わらず、その部分部分が少しの切れ間もなくずうっとひとつながりに続いて演奏されるのは新鮮で、やっぱりとてもかっこよかったです。
以上、主に弦楽器についてしか書きとめられていないけれど、とりあえず今日はここまででアップします。ヴァンスカさんそしてラハティのみなさん、ほんとうにすばらしい時間をありがとうございました。